上には黒い宙(そら)が広がり、下には灰色の砂地が続く静かな月の上。  クレーターの縁に腰掛けながら、ヒツジカイはツノ笛を吹いていました。 「ホームシックかい?」  と、その隣に腰掛けていた黒ウサギは、目の前に浮かぶ青い星を見ながらヒツジカイに尋ねました。 「随分と遠くに来たと思ってね。彼らに、この笛の音は届いているだろうか」  と、ヒツジカイも青い星を見ながら答えました。 「彼らはヒツジだ。相変わらず群れて呑気に草を食べていることだろうさ」  そう言う黒ウサギにヒツジカイは、「そうかもね」と言って少し寂しそうな笑みを浮かべました。