IIIVIV それは何の前触れも無く自然に そして当たり前のように降りてきた 家へと続く細い小道 僕は考え事をしながら歩いていた 考えていたのは自分のこと 何で自分はココにいるのか 何を信じれば道が開けるのか 自分は何がしたいのか いくら考えてもわからなくて 何も出来ずにいる自分が悲しくて 曖昧な自分に落ち着かなくて 僕は ただただ考えていた それはきっと考えることが 面倒なこの世界とは違って 唯一誰にも邪魔されない 自分だけの世界だったから 考えている時だけは 眠って夢を見ている時だけは 本当に自由を感じられる 本当の自分をさらけ出せる 何者にも束縛されない 自分だけの時間 自分しかいない世界 そこに それは突然現れた まるでずっといたかのように ただ霧に隠れていただけのように それが現れた瞬間に 僕はそれを理解した 温もりが心から溢れ それが喜びなのだと確信した それは間違いなく自分だった 傍観者としての自分の存在に気づいた時 初めて僕は自分という存在を認識した 自分という肉体と そこに繋がれた意識という自分 それはまるで操り人形と人形使いの様な関係に見えて 実のところは どちらも操り操られている そして その劇を見つめる観客としての自分 まるで 演じることに気を取られて観客を忘れた役者のように 僕はそれまで その透明な眼差しに気づかなかった でも今は違う 今は世界を見渡すことが出来る この広い世界を そう 僕はこの瞬間に世界を手に入れた