EGG WORLDS 暗く広大な空間が広がっていた 一面には 卵形のポッドが整然と そして無数に並べられている それらは青い光で照らされ 海底を思わせた ポッドはそれぞれクレードルに固定され その間を通路が繋いでいる そんな中に 1ケ所だけ暖かな光の漏れる場所があった それは小さな小屋だった 小屋の前には 焚き火を見つめるひとりの老人がいた そして その隣には少女の姿をした人形がいた 老人に人形は語りかける その声に老人は力なく笑みを浮かべ 顔を上げた 目の前には青光の波がたゆたい 空は深海のように闇を湛えている 老人は語り始めた かつての世界 かつての自分 そして かつての想いを 人形は老人を見つめ 記録を開始した SID:550E4073-D751-4D84-960A 人形は歩いていた どこまで行っても景観は変わらず 人形の足音だけが響いている 異変を知らせる赤い情報が 宙に浮かぶようにしてAR上に表示されていた モニターで状況は確認済み しかし 体を移動させるにはそれなりに時間がかかる 直接会わなければ そう人形は判断した 老人は言っていた 自分の後継者は現れないかもしれないと それは箱舟の完成を意味するが この罪は引き継がれ そして 自分は罰せられなければならないのだと ポッドからは光が漏れている それは周囲の冷たい光ではなく かつての記憶にある あの光だった